こんにちはアルカスです。いつも大変お世話になっております。今回も当ブログへのご訪問、ご閲覧をいただき誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願い致します。
このブログはホラリー占星術、という西洋占星術の技法のひとつについて、17世紀英国で出版された占星術の教科書(※この書は私が所持しているレグルス版によりますと、参考図書紹介と索引、これらページ数が振られていない部分を除きますと全832ページ。3部構成で、1部は占星術の基礎、2部がホラリー、3部がネイタルについて書かれています)「クリスチャン・アストロロジー(Christian astrology, 以下CAと略します)」に書かれている事をご紹介し、訪問を頂いている皆様と共に学んでいきたい、そんな気持ちで書き続けています。
ホラリー占星術とは、生年月日で個人の運命や未来を読んでいくネイタル占星術とは全く違います。
命術的なイメージではなく、お客様が具体的に悩んでおられる事柄、迷っておられる選択を、占い師が内容を承った日時と場所の星の配置で答える卜術です。
CAの著者にして、17世紀英国に突如現れた天才占星術師ウィリアム・リリーは、なるべく多くの様々な質問、例えば
・私は長生きしますか(P136)・どこに移ったら幸せに暮らせますか(P137)・会わなければならない人がいるが、家にいるだろうか(P147)・金持ちになれそうか。ずっと独身でもお金の苦労はしないか(P181)・聞き捨てならない情報が入ったが、これって本当の事なのか。それともただの与太話か(P192)
に答えるホラリーの技術をCAに遺しています。
恋愛・結婚に関する質問の読み方については、P302から319まで書かれています。
このブログはタイトルにもあります通り、 恋愛結婚の項、このたった18ページを、ぼちぼち翻訳して終わるつもりでした。
いや、勿論それが本線なのは今でも全然変わってないと言うか、そうしているつもりですし、ブレていません。
しかしこのブログを最初の頃から、もしくは途中からであっても継続してご覧いただいている皆様ならご存じの通り、本論に入るまでの直接関係ない、いや関係ないと言いますか、色々古典占星術的な繋がりがあると私は思っているのですが、そういった折々の話題を先に話しておきたいところがありまして、中々本論が遅々とした歩みになってしまっている事、申し訳なく思っています。
前回、前振りをさせていただきました
「thema mundi」テーマ・ムンディ
とこのブログでは呼ばせていただきます、このお話を少しだけさせてください。
山本啓二先生が訳したS.J.テスター著「西洋占星術の歴史」(恒星社厚生閣)ではテマ・ムンディと書かれていますが、どうもYoutube等で向こうの人の発音を聞きますとテーマ・ムンディと言っているように聞こえますので、当ブログではテーマ・ムンディでいかせていただきます。
私がテーマ・ムンディについて調べる流れになったのは、詳しくは前3回分、その22、その23,その24、デメトラ・ジョージ先生以下の文章を読んでいただけると非常に有り難いのですが、ここで大雑把に申し上げますと
デメトラ・ジョージ先生のブログで、現代的な占星術を学んできて、今度は伝統占星術も習得したいと思っておられる方達へのアドバイスとして、今までの現代占星術の考え、特に
「12文字のアルファベット」は一端頭の中から外しましょう、との記載がありました。
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「12文字のアルファベット」って何?私、知らなかったので調べました。
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「牡羊=1ハウス=火星」「牡牛=2ハウス=金星(※最近は小惑星セレスが牡牛のロードという新説もアメリカで広まりつつあるそうで、驚きです)」以下同様に続き「双魚=12ハウス=海王星」までサインの順番とハウスの数字順、そしてサインの支配星は大体同じような意味を持つ、もしくは同じイメージを共有する、との考えが「12のアルファベット」だと知りました。この説は結構アメリカではメジャーのようです。
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この種のサイン、ハウス、ロード一体説は最近起こった訳でもなく、17世紀にもそんなこと言う人たち結構いましたよ、とアンソニー・ルイス先生がご自身のブログで書かれていました。リリー先生はCAで「1ハウスの副象徴は牡羊サインであり、土星です。なぜならハウスの始まりは1ハウスであり、サインの始まりは牡羊、惑星の先頭はカルディアン・オーダー的に土星だから」と記しています。そうすると2ハウスの副象徴は牡牛サインで木星となり、3ハウスの副象徴は双子サインで火星となり、以下順々となる訳です。
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で、古典はこれでOKか、となった時にもっともっと前から
「世界創生」「宇宙誕生」のチャートというのがあったらしい、
というのが
「テーマ・ムンディ」
となる訳です。
世界だの宇宙だののレベルまで行ってますので、もう神のネイタルチャートと称しても良いんじゃないでしょうか。
ではもう一度確認の意味で、テーマ・ムンディとは何でしょう。英語版ウィキペディアに聞いてみます。
「テーマ・ムンディ(世界のチャート。「テーマ」とはチャートを意味する言葉でもある)とはヘレニズム時代の占星術で用いられた神話的なホロスコープで、宇宙の始まりにおける太陽と月を含む7つの可視惑星の配置とされるものを示しています。サインのルーラーシップ、イグザルテーション、アスペクトの意味などを論理的に説明するものです。」
さあ、私はこれを読み、矢も楯もたまらず言ってしまいました。
ヘレニズム時代って何?
えー(笑)
ここからですね。私の長い旅が始まりました(笑)
ヘレニズムって何?全然知らないです。なにヘレニズムって?
ヤフー検索にHellenism,Hellenisticと打ち込んで 、当たるを幸い翻訳しまくる日々が続き、
まだ続いています(笑)もちろんthema mundiの検索結果も英語圏のものでしたら何とかかんとか
訳し続けています。
「Hellenistic astrology」(2017)の著者クリス・ブレナン(Chris Brennan)は、自身のwebsite(と、思われる)「The horoscopic astrology blog」の中の記事「The Thema Mundi」(2007)でこう述べています。
「伝統的な黄道サインのルーラーシップの起源は、テーマ・ムンディと呼ばれる、
世界が生まれた瞬間の星の配置とされる神話的なチャート、世界のネイタルチャート
にあります。」
クリス先生は、テーマ・ムンディこそ、12サインルーラーシップの元祖本家であると、述べています。
ここよりサインとルーラー惑星との絆が初めて結ばれたと。
クリス先生、ブログにそう書かれた10年後に出版された「Hellenistic astrology」P228でも
「ヘレニズム流派の中核を成す、最も重要な概念構成の一つが
「テーマ・ムンディ」という名で知られる、世界が誕生したとされる
神話的なホロスコープです。」
と書いています。ヘレニズム占星術の基礎概念を表した「世界誕生」のチャートであると。
テーマ・ムンディとは
1室(ハウス)は蟹サインで月が入っており
2室(ハウス)は獅子サインで太陽が入っており
3室(ハウス)は乙女サインで水星が入っており
4室(ハウス)は天秤サインで金星が入っており
5室(ハウス)は蠍サインで火星が入っており
6室(ハウス)は射手サインで木星が入っており
7室(ハウス)は山羊サインで土星が入っている
チャートです。
以上のような構成となっています。星々が自身の支配サインに入っていますね。
世界誕生、宇宙の始まりチャートです。全く神のネイタルチャートです。
では8室から12室までは?当然水瓶、双魚、牡羊、牡牛、双子と
対応サインが並ぶ訳なんですが、惑星は7つしかなく既に使い切っておりますので、
惑星の記載はありません。だからと言って残り5サインが空き家という訳でもありません。
ジュリウス・ファーミカス・マテルヌス(Julius Firmicus Maternus)という占星術の詳細な解説書を書いた作家がいます。4世紀シチリアの人です。職業占星術師ではなかったかもしれません。でも著書「Matheseos(ラテン語で占星術とか数学という意味らしい)」はこの本以外では見当たらない古代ギリシャの占星術の知識や伝承、資料が多く含まれており、唯一無二、古典占星術最大級の情報源と評す人もいます。
この「Matheseos」(Astrology classics)のP71-75で、ファーミカスはテーマ・ムンディについて話しています。
「土星は最初に月と結びつきます。彼(土星)は月の状態を見ているので。
彼は女性的なサイン(山羊)に位置しているので、月の状態を見ており、同じく女性的なサイン(蟹)に位置する月の光をオポジションで受けとめます。
しかし土星が移動し水瓶サインに入ると、彼は太陽とオポジションで結びつき、太陽と同じ状態になります。彼と太陽は共に男性サインにいるので。」
以下同様に、木星が射手にあると、彼(木星)は男性サインにあり、太陽とトラインのアスペクトを作ります。木星は太陽の状態と同様です。理由は木星が太陽と同じ男性サインにあり、太陽のパワーに従うからです。
しかし木星が双魚に移ると、月と繋がっていきます。木星が女性サインに入り、蟹にある月も女性サインでトラインになるからです。
火星は蠍、月蟹とは女性サイン同士でトライン。火星が牡羊に移れば、獅子の太陽と男性サイン間でトライン。
金星は男性サイン天秤で、月蟹とはクォドレイト(スクエア)。女性サイン牡牛に移ると、獅子太陽とクォドレイト(スクエア)。
と4つの惑星はそれぞれ自分のルーラーシップサインで、太陽月とアスペクトする事をテーマ・ムンディを通して説明しています。
このようにテーマ・ムンディとはサインやアスペクトによる惑星間の繋がりやルーラーシップを説明する為に作られた、神話的という名の人為的なチャート、ということになるようです。
テーマ・ムンディはヘレニズム時代に作られました。ヘレニズムとは何か。
エリック・フランシス(Eric Francis)が2007年に書かれたブログ
「Thema Mundi: The Chart of the World」の中で、エリック先生は
「プロジェクト・ハインドサイトのメンバーの一人であるロバート・シュミット(Robert H. Schmid)によれば、ヘレニズム占星術というシステム全体が登場したのは約50年ほどの期間だったようです。占星術を学ぶのに50年はかかると考えると、ハウス、惑星、サイン、多数の計算方法、解釈のルールなどを含む高度なシステム全体が、その短い時間枠の中で発明、開発、または発見されたという考えは驚くべきことです。しかしいずれにせよ、そのような事が起こったようです。」と記しています。
約50年の期間に、ヘレニズム時代は西洋占星術という現在まで伝わるこのシステムをほぼ完成させたと。
西洋占星術の「形式」を作った、ヘレニズム時代とは。
私は現在、個人的にヘレニズム期を、漂流中でございます(笑)
次回、この件に関し少しは実のあるお話が出来たらと思っています。
どうやらこのヘレニズム期というのは、
マケドニア王アレクサンドロス3世が32歳の若さで急死
というところからが事の発端らしいです。えーっと次回をお楽しみに。
CA P305 25行目の翻訳から入ります。ここからの項は
結婚の障害となる事情とは
です。それまでは縁組の可能性について、各種のポジティブな暗示を中心に観てきました。
ここからの項はちょっと難しくなるかもしれない、それは誰のせい?的な部分を考察していきます。
「たとえ上記で示されたような結婚への大きな可能性があっても、実際には行われない、もしくはその前に大きな障害が立ち塞がる事も少なくありませんので、判断には十分な注意を払いなさい。」
「そしてその障害が何処から起こって来るか、それを防ぐ手立てなどを知りたいのなら、まず凶星が男女の象徴星間の配置のリセプションを妨げているかどうか、つまり彼らのアスペクトをフラストレイトしているか、プロヒビットしているか、象徴星間に凶星の光が介在しているか、を見てください。」
この文章で「配置のリセプション(reception of the disposition)」という表現があるのですが、私の解釈では多分アスペクトの事ではないかと思っています。で、その内容はフラストレーション(Frustration)とかプロヒビション(Prohibition)があると、邪魔が入るという暗示になるということなのかなと、考えます。
プロヒビションの説明、してなかったですよね。CA P110の下の方にあります。
「プロヒビションとは、何らか希望している事柄の実現や結果を表す2つの惑星がアスペクトしようとしている時、彼らが正確なアスペクトを形成する前に、もう1つの惑星がコンジャンクションかアスペクトを挟んでくる為、それによって希望していた事柄が邪魔され、遅延を余儀なくされます。
これをプロヒビションと呼びます。
例えば、火星は牡羊サインの7度にあり、土星は12度であったとしましょう。
火星は結果を約束する土星に接近する時、(火星によって表される)その人の仕事の成功を意味し、太陽は同時に牡羊の6度にあります。
さて太陽は火星よりも動きが速いので、火星を追い越し、火星よりも先に土星とコンジャンクションします。これにより火星もしくは土星が意味していたものが、彼らが正確にコンジャンクションする前に、まず火星、次に土星が太陽に妨げられる、プロヒビッテッド(prohibited)される事を意味します。
このようなプロヒビションの形は、コンジャンクショナルまたはボディリー・プロヒビションと呼ばれます。そしてどの惑星のコンバストも、あり得る最大の不幸であると知らなければいけません。」
…まあ馴染むのに時間が掛かりそうな文章ではありますよね(笑)
火星くんと土星さんがキスしようとするのを、後からわーっと追いかけてきた太陽が二星に続けざまにキスして、それで火星くんと土星さんの間になんだかキスしにくい微妙な雰囲気が生まれてくるよと、まあそんな感じのイメージなんでしょうかね。
このリリーのプロヒビション説明に関心を持たれた方は、鏡リュウジ氏訳「ホラリー占星術」の著者アンソニー・ルイス( Anthony Louis)先生が、ご自身のブログでロバート・デルース(Robert Deluce:19世紀後半~20世紀中頃に活動したアメリカの占星術師。ホラリー占星術の本を出している、私が生まれた年・月に亡くなった)のホラリーチャートを引っ張り出してきて、興味深いプロヒビションの検証を行っている「Lilly on Prohibition in Horary Astrology」を是非ご一読くださいませ。
では来月もお会いしましょう。
アルカスでした。