こんにちはアルカスでございます。いつも大変お世話になっております。いつも当ブログへのご訪問ご閲覧、誠にありがとうございます。
このブログに初めてお越しいただいた皆さんはじめまして。アルカスと申しますお願いします。
このブログは西洋占星術という星占い関係のブログです。西洋占星術ってジャンルが色々あるんですが、その中で
「ホラリー占星術」
という占術がございます。このホラリーについて色々とご紹介ご説明させていただいているブログとなります。
ホラリー占星術とは占星術師がお客様からの具体的な質問に答える事を目的に編み出された占術です。恋愛問題は勿論、紛失した持ち物はどこにあるのか、希望校に合格するか、引っ越しを考えているがどちら方面に行くべきか、体調が悪いのは何処から来ているか、等々お客様の日々の暮らしの中で起こって来る諸問題に答える占星術です。
このホラリーという占術、1600年代のイギリスに天才と謳われた使い手がいました。その名はウィリアム・リリー(William Lilly グレゴリオ暦1602年5月11日-1681年6月9日)。恐るべき的中率を誇り、ホラリーの達人とも呼ばれた職業占星術師でした。リリー先生が書いた占星術の教科書クリスチャン・アストロロジー(Christian astrology, 以下CAと略します)の第2書49章結婚の項、P302~319、ここの内容が所謂恋愛・結婚ホラリーの技法紹介、となっておりまして、日本の占星術師の皆さんは勿論のこと、ホラリーに興味のある一般の方々にも、興味を持ってもらえる内容かと思いまして、ここを訳させていただくブログを始めました。第1回のアップが2020年2月29日の事です。たった18ページ程度の翻訳に軽く3年の時間が経過してしまい、現在まで連載は37回に到達し、もうさすがにいい加減にしないと、と思いまして、今年に入って急ピッチで進めております。
3年間月1回のペースで連載を続けてきて、なぜまだ翻訳が終わらないのかと申しますと、正直言ってだらだらやってるから、が理由その1ですが、その2としてここ数年の間にとても情報量が増えた古典占星術のネタをボコボコ入れているからです。
私アルカスは古典占星術をもっと学びたいと思っています。
私にとって冥王星が水瓶座に入ったとか、あまり興味がありませんです。
サビアン、小惑星、ノーアスペクト、複合アスペクト…全くとは言いませんが、現代の占星術が重視している事にほぼ興味ありません。
リリー先生の後を追いかけたいと思っています。先生はCAの最初の「読者へ」のP13で、第2書ホラリー・クエッションの判断ではBonutus(グイド・ボナッティ, Guido Bonatti)、Haly(ヘイリー・アベンレイジェル, Haly Abenragel フランス語やイタリア語読みだとアリ・アベン・ラジェルと言っているように聞こえる。al-Rijal)、Dariot(クロード・ダリオ, Claude dariot)、Leupoldus(オーストリアのレオポルド, Leopold of Austria)、Pontanus(ポンタヌス, Giovanni Pontano)、Avenezra(アブラハム・イブン・エズラ, Abraham ibn Ezra)、Zael(サール・イブン・ビシャー, Sahl ibn Bishr)これらの占星術師達の本から学んだと書いています。
この中で最も古い人は9世紀前半に活動したZael、続いて10世紀から11世紀にかけ現在のチュニジアを治めていたズィール朝の4代君主アルムイッズの顧問占星術師だったHaly。一番若い人でDariot(1533-94)でしょうか。
彼らがそれよりずっと前からあった占星術の伝統を、本という形で次世代に遺していってくれました。
CAと共にこれらの先生方の本に当たっていきたいと思っています。
このところずっとやっている、と言いますかこちらも連載7回目となる
Considerations before Judgement(判断前の考慮)
のお話から先にさせていただきます。
ロバート・ベイリー(Robert Bailey)先生の論文
「The Roots of the Considerations before Judgement」
(判断前の考慮のルーツ)
このpdfを発見して、すぐさまざざっと訳しまして、大分視界が広がってきたと申しますか、リリー先生の世界がまた一つ垣間見えてきて本当に有り難い研究をしていただいたと、感謝の念で一杯です。
リリー先生の判断前の考慮は一体どこからそのネタを引っ張ってきたのか、そのネタ元はさらにどこからその話を仕入れてきたのか、とてもとても詳しく、現在最大限手に入る情報より、そのルーツを辿っていった素晴らしい論文です。
まだまだ全然閲覧可能ですので、ぜひ多くの古典占星術ファンに読んで欲しい力作です。
多分クリス・ブレナン(Chris Brennan)先生とYouTube(The Astrology Podcast)で話している方がロバート先生だと思いますが、まだお若そうなのに凄いなあと思います。オーストラリアの方なんですね。先生、勉強させていただきましてありがとうございます。
で、今回のConsiderations before Judgement(判断前の考慮)は
「月が天秤の後半15度から蠍の前半15度にある時、Via Combustaにあると難しいと言う人もいます。」
そうですね。謎のエリアと呼ばれている天秤サイン15度から蠍サイン15度までの、計30度の枠はチャートの中でも特殊な意味合いを持つと言われていますヴァイア・コンバスタ(Via combusta ヴィア・コンバスタと言う人もいます。)域に月があると(判断するのは)難しいとされている、とCA P122に記されています。
このネタ元もロバート先生によると、サール・イブン・ビシャー(Sahl ibn bishr ヨーロッパではZahel,Zaelの名で知られる)だそうです。サール先生の経歴は詳しくは分かっていません。9世紀前半にイラン東部にいたり、バグダードにいたりして、アッバース朝の王マアムーンに仕えたり、マンスールに仕えたりした天文学者だったようです。「The book of the nine judges」にも彼の名前は出てきます。
サール先生の著書「The introduction to the science of the judgement of the stars」(AFA)のBook 1 introduction 25ページに、先生のVia combusta論が載っています。
「8つ目は(月が)ヴァイア・コンバスタにある時、つまり天秤サインの終わりの方から、蠍サインの始めの方までにある時」月は欠損し良くない状態にあると見做され、ホラリーにせよイレクションにせよ、案件は損失と損害を被るでしょう、と書いてあります。
ではサール先生は何処から上記の論を引っ張ってきたのでしょう。
これは、サール先生がシドンのドロテウスの論をホラリーに持ってきた可能性がある、とロバート先生は「The Roots of the Considerations before Judgement」の中で仰っています。
「ドロテウスの本文中、月がサインの最後方でヴァイア・コンバスタにあることについてのサールの記述に準ずるものは次のとおりです。
『12. さてその旅の途中で、月が学者たちの言う「焼かれた道(burned path)」にあったなら(そして焼かれた道とは赤道の真ん中であり、天秤と蠍)。
13. また月がサインの度数の終わりにあったならば、それによって彼女は土星や火星のターム内にあることになり、タームの中でサインの終わりにあるタームほど厳しいものはないのです」(55.ドロテウス P234)』
つまりサールがドロテウスのイレクショナルとスタートチャートのルールを、ホラリー質問の判断という新しい目的に合わせて修正し、その後ヨーロッパの著者たちがこれらのルールを別の新しい目的、判断する前にホラリーチャートを検証するための論として再び修正したというプロセスがここに見られるのです。」
シドンのドロテウス(Dorotheus of Sidon 75年頃?)がイレクションの為に書き遺した月のヴァイア・コンバスタのルールを、サールがホラリーの判断に転用し、さらにヨーロッパの研究者達が改良を加え、Considerations before Judgementの1ルールに加えた、とロバート先生は解説しています。
中々込み入ってますね。
現代における古典占星術研究の第一人者ベンジャミン・ダイクス(Benjamin N.Dykes)。ベン先生が2019年に出版したドロテウスの本「Carmen astrologicum」2nd editionを持っておりますが、P233から始まる Chapter V.6 月の腐敗(The corruption of the moon)の章のP234 12と13の文章が、上記の緑色で書いたものにあたります。
で、この章の始まりの所、1の文章で
「その後彼は月の状態とその腐敗について述べました。それが見られたのであれば、いずれの作業もしくは事柄も始めるべきではありません。月とそのロードの状態が相応しいものになるまでは。」
と書いてあり、続く「月の腐敗とはどんな状態かを皆さんにお伝えします」よりP234から235にかけて箇条書きで書いてある中に12と13の暗示が入っていますので、これは基本イレクショナル占星術(※結婚、起業、入学、就職、旅行など、その始まり、スタートに星の配置・状態の良い日時を選べばその後の未来も順調で大過ない、とする占星術)の証明の一つのようです。
あ、ちなみに「その後彼は」の彼というのはドロテウスの事で、この本はアル・タバリ(Ibn Farrukhān al-Ṭabarī, Omar Tiberiades 762–812)という中世ペルシャの占星術師が、もともとギリシャ語で書かれていた「Carmen」が3世紀にペルシャ語に翻訳され、それをアル先生がアラビア語に訳したそうで、ドロテウスの本なんですが、翻訳して色々注釈とかも入れてるのはアル・タバリ先生ということになります。
さて論文は以降もずーーーっと続く大作ですので、ぜひこの
The Roots of the Considerations before Judgement
検索したらすぐpdfが出てきますので、読んでいただけたらと思います。私、心よりお勧めさせていただきます。
それでは続きまして当ブログのメインテーマ。CA翻訳の方に移らせていただきます。
CA P315 14行目、P314 18行目「女性は配偶者以外の誰かと付き合っていますか」からの続きです。
もし火星が7ハウスのロードもしくは月とコンジャンクション、もしくは1つのサイン内にあってコンジャンクション、あるいはドラゴンテイルとコンジャンクション。その女性には、自宅からほど近い場所に住んでいる、婚約した相手がいます。そしてもしこれらが1度以内にあれば、その人はその家にいて、質問している男性もしくは彼女の夫の親しい仲間の1人と考えられます。
火星を質問者男性以外のもう一人の男性の象徴と捉え、その火星が7ハウスのロードか月、もしくはドラゴンテイルとコンジャンクション、重なっているならば奥さんはかなり親しい人がいる、下手したら結婚の約束もしちゃってるかもしれない、しかも1度以内の超緊密なコンジャンクションならば、質問者男性とも親しい男性ですよと、中々ハードに捉えていい証明のようです。
もし月か7ハウスのロードが火星からセパレート、もしくは火星が7ハウスのロードからセパレートしているのなら、この女性は、夫と知り合う前に恋人がいたのでしょうが、今はどちらかが相手を見放したか、あるいはお互いに忘れてしまったのでしょう。
月と7ハウスのロードのいずれか、あるいは両方でも火星からアスペクト分離、つまり度数的に離れているのなら、前は付き合いがある人がいたが、今は別れている、と観るようです。
火星か月が7ハウスのロードになっており、しかも牡羊か蠍サインに入っていて、火星がこれらのいずれかとアスペクト、つまりこの2サインのどちらかに火星があって、月とリセプション、そして火星が月をレシーヴしているのなら、彼女は長い事ある男性に想いを寄せていたが、今はほとんど会えてないようです。
火星か月が7ハウスのロードになっており、火星の支配サイン牡羊蠍のどちらかにあって、火星が月をレシーヴもしくはリセプションしているのなら、つまり例えば火星が7ハウスのロードで蠍15度にあり、月が山羊10度にあって火星に接近セクスタイルしているのなら、山羊サインは火星のイグザルテーションを持っていますので、そこにある月は火星にレシーヴされることになります。で、あるのならこの女性は好きな人がいるが、今全然会えてない、と観るようです。
なんか昔こういうチャート見たことあるなそういえば…しかしこの答えを出すのは難しそう…
7ハウスのロード月が火星もしくは木星と、どのサインにあってもコンジャンクション。女性は貴族、華族、司祭など彼女より社会的地位の高い、信頼できる男性がいて彼を愛しています。これらの惑星間にミューチュアル・リセプションがあるのなら、お互いにまだ愛し合っています。あるいは二人の間には、いくつかの温かい交流が行き交っており、後はタイミングだけのようです。
月が7ハウスのロードつまり7ハウスが蟹サイン支配で、そのロード月が土星ではなく、火星か木星とどのサインであれ、コンジャンクションしているのなら、その女性は社会的地位の高い男性、今の日本でいうなら旧華族とか医師、官僚、政治家、法曹関係こんなところでしょうか、こういった方の事を愛していますし、もし月と木星もしくは火星間にミューチュアル・リセプションがあるのなら、2人は愛し合っているという暗示ですとなります。まだはっきりと決まってはいないけれども、このままいけば約束をするだろうという雰囲気ですね。
7ハウスのロードか月が水星とコンジャンクション。女性は若い書記、商人、頭の回転が速く話し上手な男性に気があるようです。
水星と重なっているのなら、水星的な人物像、今だったらPCを使うお仕事、システムエンジニア、プログラマーとか。もしくは営業とか起業されてる人、お話上手で頭脳明晰なタイプの男性、をこの女性は気になっているようです。
P315-316
7ハウスのロードと金星がコンジャンクションしており、リセプションがあり、他のアスペクトの有無は考慮しない、もしくはリセプションはないがトライン、セクスタイル、クォドレイト(スクエア)がある場合、その女性は男性を欲するというよりは、同性の友達と気ままに話したいと思っています。あまり異性への興味はないようです。
これはとても私にとって興味深い暗示です。7ハウスのロード、これは男性からの質問を想定していますので、7ハウスのロードは当然女性を表す星になります。そのロードと女性惑星である金星が重なっている場合、そしてリセプションがある場合、またリセプションはないが7ハウスのロードと金星間にトライン、セクスタイル、クォドレイト(スクエア)が出来ている場合、異性への関心は薄く、女性同士で楽しくおしゃべりしたいと思っている、だから別に好きな異性とかいませんよ、という暗示になるようです。
P316
7ハウスのロードもしくは月が土星とコンジャンクション、女性は年配者か宗教関係か田舎者か
雰囲気が地味な男性に惹かれるでしょう。
うーんなるほど。いかにも土星的なイメージの男性に、女性は惹かれる、ということですね。
7ハウスのロードが太陽とコンジャンクション、彼女は現在、質問者(Demandant)の質に見合った、ある立派な人物を愛しています。もしそれがリセプションを伴う場合、彼は、彼が望むなら、彼女と関係を持つか、または持てるかもしれません。
しかしもしリセプションがない場合、彼は彼女を気にしておらず、全く見捨てています。
7ハウスのロードと太陽がコンジャンクション、リセプションがあるのなら、つまり太陽の支配サイン獅子もしくは牡羊にあってコンジャンクションなら、あるいは7ハウスのロード側の支配サインでコンジャンクションしているのならば、2人は関係を持つかもしれません。
しかしリセプションの無いサインでのコンジャンクションの場合、つまり普通に太陽が7ハウスのロードをコンバストする場合は、男性側は女性に興味がない、としています。
しかしより多くの惑星が7ハウスのロードと同様に太陽とアスペクトしている場合(特に土星や水星)、より多くの男性が彼女と関係を持ち、彼女はまだそれをやめる気はないですし、ちょっと鈍いです。
この一文も面白いです。太陽と7ハウスのロードがコンジャンクションしている時に、他の星、特に土星や水星がこの2星とアスペクトしているのなら、この女性は他の男性からのアプローチも受けてしまうでしょう、ということのようです。なんか女性の中で恋愛モードに入っている期間ということなのでしょうか。。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。
アルカスでした。
次回、多分、おおよそ最終回の予定です。