こんにちはアルカスです。いつも大変お世話になっております。いつも私の記事をご覧いただき感謝しております。ありがとうございます。
17世紀イギリスが生んだ偉大な西洋占星術師・ウィリアム・リリーの古典占星術の名著「クリスチャン・アストロロジー」から、彼自身が手掛けた35ある例題ホラリーチャートの中より、自身の経験を綴った、自身が質問者であり鑑定者となった「盗まれた魚/Fish Stolen」のチャート解読は第4回に入りますが、今回も楽しく読んでいただけましたら幸いです。
四旬節に食べるために、昨年末より魚を押さえていたのに、引き渡し当日誰かに盗まれてしまうというトラブルに巻き込まれた有名占星術師ウィリアム・リリーさん。報告を受けた1638年2月10日8時45分(これは現代の暦に直すと2月20日9時になります)のホラリーチャートから、魚泥棒探しに入ります。
「買った魚は誰がどこに持ち去ったのか」「魚の完全回収は可能か」
1638.2.10 8:45 stolen fish
リリーは7室のカスプに重なっている、ただ一つのアングル在ペレグリン惑星・木星に注目しました。彼の盗難チャート渾身の一撃、 「真犯人はアングル在ペレグリン惑星によって表される」 証明によるものです。
しかし次の瞬間、こう思い直します。
「でも僕が盗まれたのは魚。紳士がこんなもの気にもしないでしょう。」
私はとりあえず紳士と訳しました。本文ではGentlemanと記してあります。
レディースアンドジェントルメーンのアレです。
日本で紳士と言うとまあ、上品で礼儀正しくマナーも完璧、教養のある大人の男性というところでしょうか。TPOに応じた服装や振る舞いを意識し、一般常識とテーブルマナーなどを身に付ければ、なんか誰でもなれそうな、と言うか周囲からそう思われそうな、感じはしますね。
でも、どうやらここでのGentlemanは、17世紀イギリスのGentlemanはその程度のものではなさそうなんですよね。どうやら。 調べてみました。
リリーが指したGentlemanとは貴族と大地主の方々のようです。
つまり王の下で実質イギリスを仕切っていた少数の貴族階級と、称号の付かない準貴族階級である大地主層Gentryが、国や地元の政治経済に直で関わるほどのハイクラスを形成していたようです。このハイクラスを「Gentleman」とその時代は呼んでいたそうです。
いずれも莫大な土地を所有する不労階級であり、しかし16世紀中頃には国教会聖職者、高級官僚、士官などといった一部の職業はGentleman的職業とされていたようです。土地や財産を相続することのできない、Gentryの次男・三男が生活の為に就いたという側面もあるようです。
つまりまあ、とんでもない大金持ちの上流階級の人々が、間違っても魚倉庫に盗みになんか入らないよ、ははっ。
と、言いたかったのでしょうね生まれが小作農の家だったリリー先生は。 17世紀イギリスのとんでもない格差、身分・収入の差を感じて生きていればこその見立てです。
彼は木星をこのGentlemanもしくはそれにかなり近い層を象徴する星である、と捉えています。木星は相当に生活レベルの高い人物を表す星だと。基本的に。
よって木星が「泥棒」を暗示する諸条件を備えているただ一つの星だったとしても、リリーは17世紀イギリスのコモンセンス・社会常識により、この可能性を即削除。
しかし木星が入っている黄道サインには注目しました。
水星とフォルトゥーナ(パート・オブ・フォーチュン)のあるサインにも。
それはなぜか。
次回に続きます。
アルカス