こんにちはアルカスでございます。いつも大変お世話になっております。今回も当ブログへのご訪問を頂き誠にありがとうございます。
初めて当ブログにお越しいただいた皆さん、初めまして。アルカスです。
西洋占星術を用いた占いを生業とさせていただいております。
このブログは主に古典占星術もしくは伝統的占星術と呼ばれている西洋占星術について、私なりにあれこれ情報を発信しています。
よって天王星、海王星、冥王星の話は殆ど出てきませんし、小惑星やマイナーアスペクトは私にはさっぱり分かりません。
「太陽を最も重んじ、占星術鑑定の中核としなければならない」という考え方があるのは承知していますが、今はフラットな視点で古代の先生たちが遺してくれた言葉に耳を傾けたいと思っています。
本ブログの主要テーマは、17世紀イギリスで大変有名だった天才占星術師ウィリアム・リリー(William Lilly グレゴリオ暦1602年5月11日-1681年6月9日)が書いたホラリー占星術およびネイタル占星術の教科書「クリスチャン・アストロロジー(Christian astrology, 以下CAと略します)」太玄社から出ている日本語版では第1書&第2書、Astrology classics社から出ているCA Book1&2でも同じページ、P302-319までの49章結婚の項、つまりホラリー占星術で恋愛と結婚の質問にどう答えるか、その技法がこの項に書かれています。この18ページ弱を、Astrology classics社のものを私なりに訳させていただいて、都度都度私が思うところも書きつつ、ご紹介させていただく、これが本ブログで主にしたい事、です。
18ページぽっち訳すのに、なんで35回も掛かっているのかと言いますと、それは私がその時々に興味を持って調べた古典占星術関係のお話を、皆様にも聞いてほしくて書いているのが原因です。
しかしさすがに今年中には一区切りつけたいとの思いもありますので、ピッチを上げていきたいと考えております。
ホラリー占星術とは何でしょう。
ホラリ―とはお客様が占星術師に自身の悩みを相談した、ちょうどその時。
質問内容を占星術師に話して、占ってほしいと告げたまさにその時の、占星術師がいる場所(=緯度経度)で立てるチャートの事です。
お客様のホロスコープ、ネイタルチャートで読むものではなく、占星術師がお客様からの質問を承った日時、お客様と占い師がその行方を知りたいという気持ちが一つになった時に、何らかの
魔法が掛かるトランジットチャート
それがホラリーチャートなのです。
この特殊なチャートを読む古典占星術的手法・ルールが質問内容毎にいくつもあり、それを整理し出版したのがCAです。
今回はすぐにCA翻訳から取りかからせていただきます。
312ページ24行目からです。
あ、その前に念の為に記しておきますが、しつこいようですがくれぐれも、これは
個人のネイタルチャート、ホロスコープを読むための手法ではありません。
ホラリーチャートを読む為のルールです。どうぞお間違えなきよう。
乙女は処女か否か(Whether a damsel be a maid or not.)
アセンダントとそのロード、月が判断材料です。もしこれらがフィクスドサインにあって、良い位置にあるのなら、その女性は処女です。しかしこれらがコモンかムーバブルにあって、フィクスドサインにある凶星とアスペクトしているのなら、信用できないところがあります。また蠍サイン上昇も本人はそう言いますが、あまりに人に気を許し過ぎな所があるようです。
私は多くの点で古代の識者と意見が異なるが、この点についてもそうです。
獅子サインに火星があって蠍サインが上昇している場合、質問者は疑われたり、誘惑されたりするが、
生真面目に処女を守る人です。
乙女とはまだ結婚していない、独身女性を指すものと思われます。紹介された女性がいるのだが、もう既に経験済みかな、それともおぼこかな、という質問に答えるルールです。
フィクスドサイン牡牛獅子蠍水瓶。ここにアセンダントのロードか月が入っているのなら、あるいはアセンダントサインがそうなら、その女性は真面目で誰にも気を許してはいない、となるようです。フィクスドサインは恋愛に関しては真面目、身持ちが堅い、簡単になびかない、など一定の評価を与えているようです。
コモン(双子乙女射手双魚)サインかムーバブル(牡羊蟹天秤山羊)サインにアセンダントのロードか月があって、フィクスドサイン在凶星にアスペクトしているのなら、処女じゃないかもしれないという暗示です。
蠍サインが上昇していると、ちょっと微妙、のようです。リリー先生この辺はっきり書いていないですが、先生は元々蠍サインをあまり良くは受け止めていません。その29で紹介した蠍座事件の顛末の様に、この項目でも例えフィクスドサインであっても、蠍はやや曖昧な書き方をしています。
蠍サインの上昇で、ロード火星がやはりフィクスドサイン獅子ならば、身持ち堅い、しっかりしてる人との評価です。
P313
妻は貞操を守っているでしょうか(Whether a woman be honest to her husband.)
アセンダントのロード、月もしくは金星がフィクスドサインにあり、吉星とアスペクトしているのなら、彼女は貞淑です。凶星とアスペクト、特に火星となっているのなら淫乱です。(※脚注:火星が牡牛にあって月が蠍にありオポジション、もしくは火星が天秤にあって月が牡羊のオポジション。この場合は大分宜しくない)
太陽か月が火星とアスペクト、彼女は淫乱です。
太陽と月にアスペクトが無く、両星、火星とのアスペクトも無し。彼女は淫乱な娼婦となる素養はありそうですが、まだ実際そのような行為には至っていません。
…うちの奥さんは浮気していませんか?との問いに答える項です。
312ページからの「相手は処女ですか」相談でも思ったのですが、彼女は処女か?妻は貞節か?といった質問は、パートナーや交際および結婚相手を表す7ハウス関連のように思われるのですが、1ハウス関連、つまりアセンダントのロードと月で観ていますね。この辺は難しい部分です。
しかし私も「夫は浮気をしていますか」「彼には他に女がいますか」などのご質問を頂いた経験では、やはりリリー先生のやり方、1ハウスを質問者ではなく、質問対象者として観た方が正しいような気がしています。
アセンダントのロード、月、金星がフィクスドサインなら奥さんは真面目、からも変わらずフィクスドサインは不倫をしないサインとなるようです。但し火星とアスペクトしているなら浮気する傾向があるようで、脚注にあるように火星と月が牡牛-蠍ラインか、牡羊-天秤ラインにあるのなら、しかも火星がデトリメントとなるサイン、金星支配サインにあって月とオポジションなら浮気をする人であると、先生は書いています。
次にP313の3行目、「太陽か月が火星とアスペクト」の一文ですがこれはSun or Moon beholding Marsと原文には書かれています。beholdとは何でしょう?
AstrologyCom.comのグロッサリー(glossary:用語集)によりますと
1. 遅い惑星は自身にアスペクト接近してくる速い惑星を「見ている(Behold)」と言います。
2. また2つの惑星がアスペクトのオーブ内にある時、それらは「互いに見合っている(behold one another)」と言います。
よってbeholdとはアスペクトの事であると、見做して良いかと思われます。
てかこの言葉、私なりに調べてみたんですがあまり使っている他の先生がいらっしゃらなくてですねえ。
占星術の辞書をいくつか紐解くと「beholding signs」という用語ならポツポツ出てくるんです。意味する所は
「同じ赤緯を持つ2つのサイン。つまり回帰線から等分の距離にある2サイン、牡羊と乙女、牡牛と獅子、双子と蟹、天秤と双魚、蠍と水瓶、射手と山羊の事です。このような対のサインは、両方とも北か南であるため、プトレマイオスは「同等の力」を有すると見なしました。しかしこの考慮は、2つのサインがそれぞれ1つの惑星によって結びつけられ、相互に配置されている場合にのみ有効とされました。」
(ニコラス・デボア(Nicholas De Vore 1882-1960)著「The encyclopedia of astrology」P33)
アンティション(antiscion)の事を言ってるのだろうと思います。beholdとは意味的にはあまり関係が無さそうです。
CAに戻ります。P313 8行目から
私は占星術を学んでいる学生の皆さんたちに、これらの質問に対する判断は控えめに、むしろ沈黙を守るように忠告します。なぜなら私たちは人間として間違いを犯すかもしれないし、誤った判断を下して多くの災いの元となるかもしれないからです。
これは占星術のルールではなく、リリー先生の経験から来る忠告です。出ている事をべらべら喋るよりも、むしろ黙ってた方が賢い場合も、往々にしてありますよ、と述べています。
P313 12行目
その女性は堕落していますか、夫や恋人の他に愛人がいますか(Of a woman whether she be corrupt, or has a Lover besides her Husband or Sweetheart. )
アセンダントとそのロード、月を見ましょう。これらがアングルにあるかフィクスドサインにあるのなら、その女性は処女です。そして彼女について虚偽の噂を流している人物がいたり、今伝わっていることが嘘であったりします。
もしアセンダントのロードと月がフィクスドサインにあり、アングルハウスがムーバブルサインならば、彼女は誘いを受けたが、相手を一切信用しませんでしたし、なにも許しませんでした。
月が土星、木星、火星、太陽のいずれかとコンジャンクション。2星の間隔が5度以下の距離なら、彼女は月が重なっている惑星によって表されている人物の誘惑に負けてしまうでしょう。
しかし月が金星か水星とコンジャンクション、彼女はある女性を介して男性に誘われますが、そんな老婆か若い売春婦の言葉など意に介さず、彼女らを笑い飛ばすでしょう。
もしアングルがフィクスドサイン、アセンダントのロードか月がコモンかムーバブルサインの場合(この判断ではコモンサインの場合はさほどでもない)、彼女は誘われたことがあり、今も誘われているが、なびいてはいません。
もし月がドラゴンヘッドとコンジャンクションなら、彼女は以前誘われました。ドラゴンテイルとコンジャンクションなら、法に背き、今も罪を犯しており、今後も自らを戒めることはないでしょう。
もし火星がドラゴンテイルと同じ位置にあったのなら、同様の事が言えます。しかし火星は女性にドラゴンテイル程の悪意を科すことは無いでしょう。
一般的にどの様な質問においても月がドラゴンテイルと重なっているのなら、女性に対する間違った非難を意味し、このことを誹謗中傷と呼んでいいでしょう。
ここまでで313ページは終了です。特に難しい点は無いでしょう。あるとするなら、と言いますかjoined to という言葉がこの辺から頻繁に出てくるようになります。309ページの真ん中くらいに「either of the man or woman be vitiated or joined to Saturn or Mars」とありましたが、P313では「If the Moon be joined to Saturn,Jupiter,Mars,Sun」とか「Planet to whom she is joined」「but if the Moon be joined to Venus or Mercury」と出てきますし、P314~315にかけても結構使われています。
joined to とは何でしょうか?
「joined to: 惑星が他の惑星へのオーブ内にあっての接近アスペクトを指す。より具体的には接近のコンジャンクション。」(ニコラス・デボア著「 Encyclopedia of Astrology 」P236)
どうやらコンジャンクションを指す言葉のようです。
今更ながら、コンジャンクション(conjunction)って何でしょう?
「2つの惑星が0度内で重なっている事。2惑星が重なる時、彼らは1つになります。この言葉はラテン語に由来し、2つの体が1つになることを意味する一般的な言葉です。
しかしこれは望ましいことなのでしょうか?最も優しい愛の営みでも、最も野蛮な強姦でも2つの身体は1つになります。
合体それ自体を望んでいるのではありません。関係する惑星のディグニティと、特に惑星間のリセプションを研究することによってのみ、その合体が互いにとって望ましいものであるかどうかがわかるのです。
チャート上では、私は運命の女性と合体しているかもしれないし、失業手当を受け取るために並ぶ失業者たちの行列と合体しているかもしれません。これらは両方ともコンジャンクションなのです。」
(ジョン・フローリー(John Frawley)著「The horary textbook」P87)
コンジャンクションとは2つの身体が1つになる事。つまりセックスを表す言葉である、というのが基本としてあるようです。
となるとリリーがjoined toをここに来て何度も出すようになったのは、より直接的で露骨なお誘いを受けるようになったのなら、という意味合いがjoined to=Conjunctionという言葉に込められているように感じます。
特に「月が土星、木星、火星、太陽のいずれかとコンジャンクション」でその距離が「5度内ならば」相手の誘惑に負けてホテルに入っちゃうだろう、との見立てです。暗示的に強力なのでしょうね。
でも月が「水星か金星とコンジャンクション」ならば、女性の紹介者がいて誰かに会うが、乗らないだろう、だそうです。上記の星と何が違うんでしょうかね?
月がドラゴンテイルと合体なら、大分やばいとリリー先生は観ています。ドラゴンテイル確かにやばい2凶星以上の魔物感と言いますか、何か憑りついてくるようなポイントと、私も思っています。
今月のCA翻訳はこのくらいまでにさせてください。最後になんだかんだ続いています
「Considerations before Judgement(判断前の考慮)」
をちょこっとだけ、進めます。
実は私
「A brief & most easie introduction to the judgement of the stars(占星術簡潔簡単入門)」
という本を持っております。大分前に買ったと思いますもう記憶にありません。この本はクロード・ダリオ(Claude dariot 1533-94)というフランスの占星術師であり、医者でもあった人が1557年にラテン語で執筆した本を出し、翌年フランス語版を出し、英訳版は1583年にファビアン・ウィザース(Fabian withers)という人が初めて出したとされ、それから15年後の1598年と1653年、この英本が再発されたそうです。1598年の版はウィリアム・リリー先生も入手し、CA執筆の際の重要なソースとなった、と私が持っているアスケラ版に載っていたデイビット・プラント(David Plant)氏の前書きにそう書いてあります。
で私、この本昔何度か読んだ記憶があります。中身は全46ページくらいでさらっと読みやすいですしね。
しかし58歳になった今、一部始終すっかり忘れてしまいました(笑)久しぶりに本棚から取り出し、めくってあ~そういえばそんなこと書いてあった、そうそうあったあったともう数ページ、本から剥がれ落ちそうなのを押さえて…P33にこんな項があったのを、読みながら思い出してきました。
「Of such things as are to be observed before you give judgement of any question chap 19」(どのような質問でも、判断を下す前に確認すべき事項について 19章。)
げっ、判断前の考慮じゃねえかよ。で、ここにどんなことが書いてあるのかと申しますとですね。。
あ、その前にこの事を私に教えてくれた、思い出させてくれた、私にとって有難き師匠ロバート・ベイリー(Robert Bailey)氏が2021年7月にpdfアップしてくれた論文
「The Roots of the Considerations before Judgement」
Q: これは何ですか?
A: ええ。CAに載っている「Considerations before Judgement(判断前の考慮)」。あそこに書いてある諸々は、リリー先生どっから引っ張ってきたのか。で、そのネタ元はさらにどこからそのネタを引っ張ってきたのか。摩訶不思議な12の項目のソースを一つ一つ細かく調査した、ロバート先生渾身の一作です。
がネットでご覧いただけます。英文ですがこれ是非読んでみてください。英文ダルい方は私が色々書かせていただく来月までお待ちください。
アルカスでした。
また来月。