こんにちはアルカスでございます。いつも大変お世話になっております。今回も当ブログへのご訪問をいただき、誠にありがとうございます。
私アルカスは西洋占星術を用いた占い鑑定業を細々営んでおります。このブログは17世紀イギリスの天才占星術師ウィリアム・リリーが遺した古典占星術の教科書「クリスチャン・アストロロジー(Christian astrology 以下CAと略します)」P302より始まる、恋愛の質問にホラリー占星術でどう答えるか、P319までずらずらっと載ってるのをボチボチ訳して、その都度僕の感想もちょこちょこ入れていこうかなという、そんな企画となっております。よろしくお願いいたします。
と書きつつ、すみません今回はちょっと他に書きたい事があって、そちらの方に行数を取られてしまうので、一旦お休みになりますごめんなさい。
ホラリー占星術、別名質問占星術とも呼ばれる、西洋占星術の技法のひとつです。西洋占星術とはそもそも、自らがどのような運命を持ってこの世に生を受けたのか、どのような外見、性格、体質を持ち、どのような人たちと出会い、どのような仕事に就き、どのような運命の流転を経て、人生の旅路を終えるかを生年月日時と生まれた場所から語るもの、というイメージがあります。このジャンルを専門用語で
「ネイタル占星術」
と呼ぶんですけれども、このネイタルを異様に簡略化したもの、簡略化どころかもはや別ジャンルとして独立を果たしたもの、それは生年月日一本で、個人の大体の事を語ってしまうという手法。生まれた時間や場所は分からなくとも、自分の生年月日くらい誰でも知っていますので、誰でも入ってきやすく、自分が生まれた日の太陽が位置する星座の特徴などを読んで何となく当たっているような気がする、つい頷いてしまうところもある、それが
「12星座占い」
もしくは
「太陽星座占い」
です。一般大衆向けのカジュアルな占いとして広まりました。
ホラリー占星術は上記の占星術とは全く違います。
違うが故に、好き嫌いははっきり分かれます。これは古代より論争の種になっておりますので、ピンとこない方がいらっしゃってもそれは仕方ない事です。
ホラリーはその人が直面している問題や悩み、お困りごとに答える占星術です。
具体的には、お客様が占星術師に相談し、相談内容を理解した術師は今現在、天上に瞬く星々に質問の答えを乞うべく、いわゆるホラリー・チャートを立て、チャートより吉凶成否を判断していきます。
ホラリーの長所は、ネイタルでは読み切れない個別具体の質問に答えられること。息子は希望の会社に就職できるか、消えたペットの行方、彼は私の事をどう思っているのか、携帯が何処を探しても無い、盗られたのかどこかに置いてきてしまったのか。これらの質問に答えてくれる、夢のような占術です。
ではホラリーの短所は。百発百中とはとても言い切れない事。ま当たる当たらないの前にですねえ、私は以前、お客様からご質問を頂き卦を立てた「消えた人形はどこに誰が持っていったのか」チャートに、CAに掲載されている暗示全てを当てはめていったら、ちょっとでも正解に近づけるのか?ブログをやっておりました。ご覧いただけるととても嬉しいのですが、とにかくまあリリー先生が紹介してくれた暗示の数の多い事。一切手を抜かず、様々教えてくれたリリー先生に感謝するとともに、どの暗示に主たる信を置けばいいものやら、見当もつかず。
最終判断は個々の占星術師の経験と勘に任せると仰るのでしたら、たった一つの正解を拾えるだけの腕と勘を養うまでに結構なお時間が掛かりそうなのは、容易に想像できます。
まそれが真のプロになる為の、遠くて近い道なのでしょう。
今やホラリー占星術と言えばこの人この本、みたいな感じになっていますねウィリアム・リリーとCA。田中要一郎、田中紀久子両先生による翻訳本も太玄社より出ておりまして、大分この辺を取り巻く状況が広がりを見せてきた、じわじわ認知されてきた感があります。最近では20年くらい前にアメリカで出たホラリー本、アンソニー・ルイス著「Horary astrology plain & simple」が鏡リュウジ先生の訳により、日本語本が出版されたりして、ホラリー占星術ブームになりつつあるのか?みたいな、雰囲気がしてるのやらしてないのやら。ほんの少しでもホラリーとかリリーの名前が、諸世紀とノストラダムス位知られるようになったらいいなあ、と思いつつ、実践活動に勤しんでおりますが。
私、前にも書きましたが1995年か96年かに、オリビア・バークレー先生の手によるCAの復刻版を手に入れました。オリビア先生のCA解説本「Horary astrology rediscovered」も一緒に。
私、物心ついた時から、家の本棚に門馬寛明先生や浅野八郎先生、ルネヴァンダール先生等、日本の西洋占星術界の大御所の本が並んでました。母親が好きだったんですね占い。そういうのを読んでもうはまりまくりまして、安西輝晃先生の本などもうボロボロになるほど読みましたね。1970年くらいに出た「愛の星占い」って本なんですけど、出版社名が高橋書店って書いてあって、あの「手帳は高橋」の高橋書店なんですよね。検索してびっくりしました、すげえなおい。とか、んなことはいいんですけど、ともかく、日本語で書かれた占星術の本はまあまあ読んだのかな、とは思います。我ながら。もちろん鏡先生や松村潔先生、石川源晃先生の本もばっちり持ってます。
で、私自身がこれらの書籍で学んできたことが、現代占星術、と呼んで差し支えないものだったかどうかは、わかりません。しかしこれらから影響を受けた私の頭の中は、
「占星術は複雑化した現代社会の要請に応えるべく、常に進化していかなくてはならない」
「18世紀以降に発見された天王星、海王星、冥王星、これらトランスサタニアン(土星外惑星)は既存の7惑星では語り切れない、20世紀を生きる人類、その精神や文明の更なる進化に対応し、指針を与えるものである」
「自由と独立、革命のシンボル、水瓶座のルーラー天王星、かっこいい」
特に最後の3つ目は、凄くそう思っていました。水星や金星よりも一層、大きく見え、何か自分の人生に雷のような衝撃と変化を与え、新たな世界に連れて行ってくれるような、期待と憧れを同時に抱かせてくれるものでした、天王星という星のイメージは。
オリビア先生の本を読みました。実は国内の伝統・古典占星術の草分けとも言える某先生のウェブサイトに既にその事は記してあって、そこで最初の大ショックを受けたので、確認の意味で改めてオリビア先生の本に向き合い、やはり衝撃でした。「Horary astrology rediscovered」P46の文章です。
「土星は水瓶サインも支配します」
「古い本には(水瓶サインが)土星の主たるハウスであり、”彼を最も喜ばせるハウス”と書かれています(ここでのハウスという言葉はサインという意味です。代用語としてよく用いられていました。)」
続いて天王星の説明としてこのような記述があります。
「天王星は水瓶サインと親和性が認められると、一部から思われてきた節があります。ホラリー占星術において、土星外惑星は伝統的なルーラーが表す事柄に、付随する情報を与えるのみです」
「質問にYesかNoかで答える際、その”見出し”に通常、彼ら外惑星の影響は考慮しません。ミセス・ワッタース(バーバラ・ワッタース)は『質問者の責任の範囲外にある、社会の特殊な状況を外惑星は付け加えるに留まる』と述べています。」
これが伝統・古典派の土星外惑星についての、代表的な考え方、といって良いと思います。
天王星は水瓶サインを代表する星ではない。ホラリーにおいても成立するか不成立か、の答えに直接関与しない。
土星外惑星はまあ周辺情報を語るくらいだ、と。
はっきり言って、天王星ファンだった私は傷つきました。水瓶サインと天王星に何の関わりもないと言われてショックでした。私が今まで読んできた日本語の本は100%、天王星は水瓶座のルーラーと明記してあったからです。土星はせいぜい書いてあっても副星、くらいの扱いでした。最先端の科学技術がもたらすコミュニケーションツールの進化とそれに伴う意識や価値観の変容は不可避であり、国家の有り様や経済の動向も、天王星という新たな王を迎えた水瓶座時代には大きな変革を迫られるだろう、その考え方はインターネットが世界を網羅し、その統括Googleが人類の支配者的地位を占めた今、決して間違ってはいなかったと、思うんです。
ですので、天王星と水瓶座は無関係、海王星は双魚座のルーラーではない、冥王星と蠍ありえない。
て言われて、そんな考えには一切従えない、付き合い切れないと古典に背を向ける、私と同じく日本語の本で学んできた方たちのお気持ちはよく分かります。
天王星、海王星、冥王星の存在を軽視し、支配サインから追い出すような、古い占星術など自分達には不必要だ。そのお気持ち本当によく分かります。モダンこそ現代社会に生きる自分達とその環境を過不足なく語ってくれると。そう、そうかもしれないです。
で、傷ついた私自身はどうしたかと言いますと、
ちょっと考えたんですね。主にサインルーラーとは何か、ということについて。
というのもそれまで読んできた占星術本は、あまりサインと支配星との関係について、詳しい事が書いてなかったんですね。ですので星座とルーラーと言われても、その意味合いが、私さっぱり分からなかったんです。星座を支配する星って何?どういう意味?みたいな。オリビア先生の本やCAを読むまでは、全くちんぷんかんぷんでした。
大概の占星術本のスタイルとして、まず占星術の歴史とか著者の占い観とか占術の略解みたいな文章がありまして、その後10惑星の紹介と解説、アスペクトの紹介と解説、12星座の紹介と解説、12ハウスの紹介と解説が続きまして、どこの星座に何の星があったらこういう人、みたいな説明があり、どこのハウスに何の星があったらこんな人生、とか続いて、最後に読者が自分のネイタルチャートを作れるように70年ほどの天文歴、いわゆるエフェメリスを載せていました。昔はとても読者に親切な付録だと思っていましたが、インターネットでタダでチャートを出せるようになった今、天文歴はほぼ不要なものになってしまったのは隔世の感があります。
つまり西洋占星術って、1冊の本にまとめるにはえらい情報量の多さでして、なるべく読者が興味を持つ項目を膨らませ、さして興味を引かないであろう部分はカットすると、ま、本の作りとしてどうしてもそうなってしまいます。
サインと支配星との関係性とか、そもそもの由来とか、ネイタルでそこに星がある人ならまだしも、大抵の無い人たちにとってはどうでもいい話で、そんな事より私の金星乙女座にあるんだけどどういう意味?みたいな感じになりますよね。
本も商品ですので、ある程度の売り上げを考えて、作っているという意味で、理解できるものが多かったです。
で、CAとHorary astrology rediscovered、私にとって初めての洋書を翻訳していく中で、こんなに素人に冷たい本、読者の下世話な嗜好に一切阿らない、ただひたすら古代より伝わる本当の占星術とはこういうものですよと、淡々大真面目に書き著していく2冊に出会ったことが無かったので、1行訳するごとに驚いていました。
CAは単語一つ一つがよく分からなかったですね。当時この言葉がこういう意味で使われていたのだと、分かるのに3日要する時もありました。一人部屋でジタバタしてました。でもジタバタして良かったと、今は思います。
サインと土星外惑星の間において、持っているイメージに多少の親和性が認められるにせよ、それが古代から受け継がれてきたカルディアン・オーダーに基づく7つの惑星の地位を脅かし、取って代わるほどのものではない。
読み続け、ようやく理解がそこまで追いつきました。数年かかってようやくです。
長くなりました。次回に続きます。
アルカス