こんにちはアルカスでございます。いつも大変お世話になっております。今回も当ブログへのご訪問、誠にありがとうございます。 どうぞよろしくお願い致します。
このブログは西洋占星術の主要4ジャンルの1つ、
ホラリー占星術
をテーマに連載をしております。
ホラリー占星術は、占星術師がお客様のお悩みやご質問を承り、その内容を理解した瞬間の星の配置図、これをホラリーチャートと呼びますが、このチャート一枚より、ご質問に答えるという占いです。
ご質問はどんな内容でも構いません。
私が承ってきたご質問で最も多いのは、恋愛と結婚です。
彼は私の事をどう思っていますか。今何を考えていますか。いつ連絡してきますか。
彼に他に女性はいますか。私と真面目なお付き合いをしたいと思っていますか。
別れた彼と復縁できますか。
私はいつどんな相手と結婚しますか。いつどこで出会いますか。
これらのご質問に、ホラリー占星術では具体的にどう答えるのか。私は17世紀イギリスで一世を風靡した天才占星術師ウィリアム・リリーが遺してくれた古典占星術の教科書「クリスチャン・アストロロジー(Christian astrology, 以下CAと略します)」P302よりP319までの恋愛・結婚の項を訳しつつ、私なりの考慮も加え、使えそうな情報は皆様と共有していけたらなと、思っております。
ホラリー占星術、 日本でも大分知られてきたように思います。少なくとも私がこういった占い方法があるのだと知った頃と比べるとかなり。
Kuni. Kawachi先生やいけだ笑み先生が良質で本格的なホラリー占星術の本を書いてくれたり、田中要一郎・紀久子両先生がCAの日本語版を出版してくれたり、鏡リュウジ先生がアンソニー・ルイスの著書の翻訳本を出してくれたりと、本当に素晴らしい出来事が次々と起こり、そのお陰で日本におけるこのジャンルの認知度が上がり、裾野が確実に広がっているのではないかと思われます。
先生たちの著書が出る前、ホラリー占星術の貴重な情報源となってくれたのが、とある日本人の先生のHPです。
この先生は、CAを復刻させたイギリスのオリビア・バークレー先生直伝の占星術研究家で、3つの土星外惑星、天王星、海王星、冥王星のルーラーシップを否定し、古典の考えに則って水瓶座は土星に、双魚座は木星に、蠍は火星に支配権を戻すべきと主張していて、当時その考えを初めて見知った私は、死ぬほど驚いたのを今でも記憶しています。
ホラリー占星術とCA、そしてこの先生のHPはセットになって、私の占星術ワールドに怒涛の如く流れ込んできて、その風景を一変させました。今の私は、より昔の先生たちの言葉が聞きたくて、ベンジャミン・ダイクス、古代の占星術師達の書を英訳出版しまくっている、古典派のリードオフマン、彼が出した本は出来る限り押さえて、読んどこうと思っておりますし、実践においては、天王星、海王星、冥王星がホラリーにせよネイタルにせよ、どこにあろうともあまり気にすることは無くなりました。ていうか冥王星は占星術ソフトのチャート表示から外しました。他の二つはアングルカスプのどこかに重なっていれば、何か意味合いを持つのかな、くらいの関心しかなくなりました。
古典占星術と現代占星術の違い、考える時があります。
もちろん18世紀以降に発見された土星外惑星や準惑星、小惑星などをチャートに加え、意味を与える行為は現代占星術界隈で積極的であり、古典派ではあまり見られないようです。
これが1つ。
更に、惑星がいずれかのサインにある場合の、意味するところがですね。これは両者だいぶ違うような気が、します。
古典にせよ現代にせよ、先生方一人ひとりのお考えがあると思います。それぞれに多少の意見の相違・不一致があることを承知させていただいた上で、おそらく一般的に流布されていると思われる現代占星術サイドの意見と、対して古代の占星術師たちはどう語ったか、それぞれに紹介させていただきまして、比較検討を施してみたいと思います。
例題は、ネイタルチャートで蟹座に金星がある人ってどんな人、です。
現代占星術側の考え方として、2000年11月に出版された岡本翔子著「心理占星学入門」より、P70にある金星が蟹のサインにある人の特徴について、この先生の説明を代表例として取り上げさせていただきます。
「愛情表現は母性的で保護者的。蟹座は感情的に傷つきやすいので、相手から拒絶されたと感じると、自分の世界に引きこもってしまいがち。相手に対するいたわりの感情や同情心が強く、優しい愛情の持ち主です。世話好きでややおせっかいな面もあり、恋愛に関して心配性。問題点は愛情が深すぎて、相手を甘やかしたり、依存体質にしてしまうことです。」
いかがでしょうか。現代的視点と言いますか、考えが過不足なくまとめられており、内容に納得されておられる方、賛同される方も多いのではないかと思われます。
これは蟹座と聞いて浮かぶイメージ、例えば母性的であるとか、家庭的であるとか、保護・養育及び情緒的イメージを、愛情の星・金星に纏わせると、金星はこのように振舞う、という考えを基に書かれているのではないかと、思われます。
そうやって読むのが普通だろ当たり前だろ、と思われている皆さんに、古典占星術側の回答として、まず8世紀ペルシャで活動した占星術師マ・シャア・ラー(Masha’allah)の意見をご覧ください。2008年に出版されたベンジャミン・ダイクス翻訳「Works of Sahl & Masha’allah」P369に書かれています。
「彼女(金星)が月のドミサイル(つまり蟹サイン)にあるのなら、彼は悪い結婚生活の中で、女性の愛を得るでしょう。彼は楽しみや遊びを愛するでしょう。過ちによって、あるいは望ましい愛によって。そして彼は罪深く不適切な行為をすることになります。」
…何を言うとんねん、って感じですかね(笑)何やら意味不明な文章です特に前半は。私の訳が悪い?そうかもしれません。これは筆者なりに気を使った書き方なのかな、という気もします。ニュアンス的には、そうですねあまり、蟹座金星を褒めている感はなさそうです。
続きまして、マシャ・ア・ラーの弟子であるアブ・アリ・アル・ハヤット(Abu ‘Ali al-Khayyat 770 – 835)の説明をご覧ください。1988年AFAより刊行されたジェームス・H・ホールデン英訳「The judgments of nativities」P46および68です。
「金星がムーバブルサイン牡羊、蟹、天秤、山羊にあるのなら、その人は移り気で結婚生活は長続きしません。これは蟹もしくは山羊にある人に特に顕著です。」
「金星が月のドミサイルにあるのなら、不名誉な淫らさや気まぐれな情熱を意味します。そして一般的に、金星がムーバブルサインにある場合は、何か一つのことに向き合う集中力や持続力、安定度等があまり無いことを意味します。」
この2文の意味する所を整理し、簡潔に、そして率直に表しますと
「金星が蟹サインにあるなら、その人は浮気者である。結婚してもすぐ他の人に目が行って、なかなか長続きしない」
と述べているように、見えます。
もうお一方いきましょう。
ヘンリー・コーリー(Henry coley 1633 – 1704)。17世紀イギリス、ウィリアム・リリーと同時代の数学者であり、占星術師です。リリーの晩年、コーリーは彼の秘書となり、最も彼に付き添った人物と言われています。リリーアストロロジーの継承者と言って差し支えないでしょう。
コーリーが1676年に出した(1669年初版の増補改訂版らしい)著書「Key to the whole art of astrology 」P58の考察をご覧ください。
「蟹に金星、無精で怠け者の表示。楽しい仲間との交流や下品な娯楽に夢中になりすぎる傾向。外では自分を良く見せようとし、実際はそんなでもないのにそうであるように見せかける人。ほとんどの行動において、非常に変わりやすい、変化の多い人間です。」
えー怠け者で見栄っ張りで気まぐれな人、ってとこでしょうか。
日本の占星術師・訪星珠は1996年に魔女の家ブックスから出している「占星学実践講座」で、上記の方々に近い意見を述べています。蟹座上昇で、そこに金星がある、ならばという条件付きではありますが、以下の通りです。
「本当の愛を見出すまで、移り気な愛着を示し、多くの恋愛問題を生じる。年配者に惹かれたり、他人の恋人を好きになったりします。とかく不注意で怠惰になりがちですが、家庭的な事柄を愛します。男性は女好き」
この点、訪先生はかなり古典派寄りな見解を出しています。実は同年、松村潔が学研より「最新占星術入門」というタイトル通りの初学者向けの入門書を出していますが、松村先生の蟹座金星についての見解は、上記の岡本先生のそれと同系統の、現代心理占星術系の内容で、訪先生との対比が明らかです。
で、私、現代派の説明と古典派の説明どっちが正しいんだ、とか、当たってるとか、外れてるとか、あーとかこーとかいうつもりは全く無いんです。ただ書いてある事があまりにも違うので、一度自分なりに整理しようと、思ったんです。
どうやら、何らかのサインにある惑星について語る際
現代占星術がサインの持つイメージを惑星の性質に被せて表現する
のに対し
古典占星術は惑星がムーバブルサイン牡羊・蟹・天秤・山羊にあるのか、それともフィクスドサイン牡牛・獅子・蠍・水瓶にあるのか、コモンサイン双子・乙女・射手・双魚なのか、
を重視しているように見えます。
ムーバブル(Movable。リリーや他の17世紀の占星術師達の本にはMoveableと書いてあります。移動する、の意)サイン、フィクスド(fixed:固定した、不変の、の意)サイン、コモン(Common:平凡な、普通の、共通の、の意)サイン、この3グループの内、今回はムーバブルサインについて簡単に説明させていただきます。
12の黄道星座・サインは様々なグループ分けが可能です。例えば火のサイン・土のサイン・風のサイン・水のサインと、4グループ×3星座に分ける事が出来ますし、春のサイン・夏のサイン・秋のサイン・冬のサインとも分けられます。同様にムーバブル・フィクスド・コモンと、12星座を4つずつ、3つの班に分ける考えもあります。
ムーバブルサイン、私が20代の時はカーディナル(Cardinal:主要な、基本的な)サインと習いました。牡羊サイン・蟹サイン・天秤サイン・山羊サインがこのグループのメンバーです。まさに川の水が高い所から低い所へ流れていくが如く、常に移動し、変化していくサインである事を意味します。また太陽が二至二分、春分、夏至、秋分、冬至の日に入る事で、四季の始まり、四季の軸となる主要なサインと見做されました。リリーはCA89ページで、ホラリーかネイタルでアセンダントのロードがムーバブルサインにあり、アセンダントサインもムーバブルならば、(※つまり例えば、牡羊サインがアセンダントのサインで、そのロード火星が蟹にあったとしましょう。そうであるならば)その人は不安定で、決断力がなく、変わりやすく、ふわふわした気まぐれな人物だ、と記しています。
変わりやすい、変化しやすいを意味するムーバブルサインの一つ、蟹サインに金星があるのなら、その人の愛情も変化しやすく、気まぐれで、惚れっぽく冷めやすい。古典占星術はこのように解釈するようです。
家族や家庭を大事にする、穏やかで安らぎを相手に与える、安全で堅実な関係を望む、母性的愛情で相手を包み込む…このように書かれているアメリカの現代占星術の先生もいます。古典の先生たちが言っている事とは
真逆に近いものがあります。
一つ取ってもこれくらい違いがあるのが現代と古典の解釈です。他の星座の金星でも驚くほどの違いが見られたりして、とても興味深く、面白いです。
また頃合いを見て、金星が他の星座にある場合の古典・現代の読み方の違いについて、取り上げてみたいなと思っています。
さて、本論に入ります。前回P304 16行目まで進みました。17行目結婚について、より始めます。
質問者が男性の場合、彼を表すのは、まずアセンダントのロード。次に月、3つ目が月が分離した惑星、
4つ目が男性の本質的象徴星、太陽となります。
お相手の女性を象徴するのは、7室のロード。月が接近する惑星、7室在惑星。
そして女性の本質的象徴星、金星となります。
質問者が女性の場合でも(必要な変更を加えて)アセンダントと他の象徴星、金星を用いて同様に判断しましょう。
女性より尋ねられたのならば、7室とそのロード、月が接近する惑星、を男性側に与え、
アセンダントのロード、月が直前分離した惑星、月と金星で質問者は3つの象徴星を持ち、お相手の側にも3つの
象徴星が与えられます。
…待って待って3つかなあ。
質問者:アセンダントのロード、月分離惑星、月、太陽もしくは金星、最大4つでは?
質問対象者:7室のロード、月接近惑星、太陽もしくは金星、こちらは3つでいいですね。
次行きましょう。
第1に、アセンダントのロードや月が7室にあるならば。
第2に、月が分離する惑星が、月が接近する惑星に接近するなら。
第3に、太陽と金星が、どちらかがどちらかに接近する場合。
第4に、1室のロードが7室にある、もしくは1室に7室のロードがある場合。
第5に、象徴星同士が何らかのトランスレーションにより繋がっている。あるいは象徴星間にリセプションがある。より動きの遅い惑星によるコレクションがある、象徴星間にディグニティ交換がある、7室にある月がアセンダントのロードもしくは7室のロードに力を与えている。
これらのどれかがあれば、そうなります。
そうなりますとは、2人は結ばれます、と言っている感じですね。
1つ1つ見ていきましょう。
アセンダントのロード、アセンダントのカスプがあるサインの支配星を表す言葉です。Lordは領主とか貴族という意味ですが、サインという国を治める領主=支配惑星を意味し、主に男性惑星である太陽、木星、土星に使われます。女性惑星金星および月が王の時はLadyという言葉を、リリーは使います。男性でも女性でも無い水星にはロードを使用します。
アセンダントのロードか月が7室、にあるならお付き合いする可能性がある、ようです。
続いて第2、月が分離した惑星が、月が接近する惑星に接近。例を挙げましょう。
水星:水瓶3度→月:天秤5度→木星:射手7度
3つの星の配置がこのようだったとしましょう。で月は確実に水星とトライン・アスペクトを形成した後、トラインから離れ、射手サインの木星にセクスタイル・アスペクトを作るべく接近しています。
水星は「月が分離した惑星」と見做します。木星は「月が接近する惑星」と呼びます。
この二つの星の間に、セクスタイル・アスペクトが作られるのなら、水星が木星に接近しセクスタイル・アスペクトを形成するのなら、という意味になります。
月が分離する側の惑星は、月が接近する側の惑星より移動速度が速い必要があります。そしてアスペクト完成前に止まるとか逆行するとか、そういうのが無く、順調に順行し繋がっていく必要があります。
水星は木星よりも速く移動し、木星を追いかけ、捕まえます。捕まえられたのなら、質問に対するポジティブな暗示となるそうです。
なぜなら水星は、月が直前分離した惑星=質問者の象徴星の1つ、となり、月が次に接近する惑星・木星は、目するお相手の象徴星、となるからです。
私個人的に、この暗示は難儀です。月が分離した惑星は質問者、次に月が接近アスペクトをとる惑星はお相手の表示。
もし7室のロードと月の接近惑星が違っていたら、例えば質問者が男性で、お相手の象徴星が7室のロード木星。続いて女性の本質的象徴・金星、次に月のアスペクト接近惑星が火星だったとしましょう。
この彼女を表す星は木星、金星、そして火星となります。
一体、真っ先に見るべき星はどれ?一番先に動きを辿っていかなくてはならない星は、どれですか?
と、なりませんかね。混乱、しませんか。
でもこの説は、シドンのドロセウス(Dorotheus of sidon 1世紀後半にエジプトにいたらしい占星術師)が著書「Carmen astrologicum」(ベンジャミン・ダイクス英訳版)P248に同様の暗示を記していますので、太古の昔からこのホラリー技法が語られてきたのは確かです。
この件、ちょっと続けたいので、また来月、遊びに来てやってください。
今回もお読みいただきありがとうございました。
アルカス