こんにちはアルカスでございます。いつも大変お世話になっております。今回も当ブログへのご訪問、誠にありがとうございます。 今回もどうぞよろしくお願い致します。
このブログは西洋占星術主要4ジャンルの一つ、
ホラリー占星術
について、こちょこちょ書かせていただいているブログです。
ホラリー占星術とは何か?
それは、個人の誕生年月日時および誕生地から、ネイタルチャート(ホロスコープ)を作り、その人の人生を読んでいこうとするネイタル占星術、ではなく
国や街の誕生年月日時およびその場所から、チャートを作り、その国の運命を読んでいこうとするマンデン占星術、でもなく
何らかの行動を開始するのに適した日時、例えば結婚式の始まりの日時、店の開店日時、旅行の出発日時、商談に良い日時、役所と交渉するのに良い日時を決めるのに使用するイレクショナル占星術、でもなく
お客様からのあらゆる具体的な質問に答える、つまり
・彼は奥さんと別れ、私と結婚してくれますか
・今、出会いが全く無いが、結婚相談所に入るべきですか
・車を買い替えたいが、今がその時期ですか
・携帯を無くした。どこにあるでしょう。
・介護施設に入っている父は遺言書を書いてくれますか
以上のような、お客様にとって現実的で、悩ましく、切迫していてあまり時間を掛けられない諸問題に対し
承り答えさせていただくための占星術の技法。それが
ホラリー占星術です。
具体的にはどういう事を、16回まで続けてきたかと申しますと、
大抵の占い師がお客様から受けるご質問をジャンル分けした場合、全体の5割から6割を占め、
もちろん最も多いのが「恋愛・結婚関連」です。
私はこの恋愛・結婚関係のホラリーの見方を、英国王チャールズ1世(1600-49)をして「私はいつも敵対する彼が好きではない。が、ヨーロッパ中の誰よりも占星術をよく理解している」と言わしめた17世紀英国の天才占星術師ウィリアム・リリー(1602-81)が遺してくれた、古典占星術の教科書「クリスチャン・アストロロジー(Christian astrology, 以下CAと略します)」P302よりP319までの恋愛・結婚の項を訳し、このブログにご訪問いただいている占星術ファンの皆様にご紹介しつつ、ところどころ私の考えなども挟ませていただきつつ、共にリリーの技術を学んでいけたらと、思っております。どうぞよろしくお願い致します。
私、以前から不思議に思っていたことがあります。様々な疑問や知りたいことが普段から頭の中に浮かんでは消えする性質ではあるんですが、リリーを知り、その著書を手にした時から、ずっと気になっている事があるんです。それは
なんでリリーさんは自分の本に
「クリスチャン・アストロロジー(キリスト教徒の占星術)」
なんて書名を付けたの?
です。
あの~私の実家は宗派が東本願寺なのですが、ま、例えばですよ。私がこの人生の中でもし万一、占星術の本を出す事になったとしてもです。さすがに「お東さんの占星術」なんてタイトルは付けないでしょう。ええ。
クリスチャンという言葉には愛国者、という意味も含まれていた、と何かの本で読みました。もしそういった意味で捉えていいのであれば、当時のイングランド内戦後の社会状況下において、リリーは政治・戦争関連の予言者として(そして完全ではないものの、議会派寄りの占星術師としても)既に有名であり、その彼が全編英語で書いた初めての占星術の教科書(それまでの占星術の書物は大体ラテン語で書かれていました)を出版するということもあり、諸々社会に与えるインパクトを鑑みて、このようなタイトルにしたのかなと、思えば思えなくもない、かもしれません。
情報はないかなとネットを当たる中で、ある本の存在を知り、取り寄せました。
「The hand reveals(手の啓示)」という本で、ディラン・ウォーレン・デイヴィス(Dylan warren-davis)というイギリスの方が1993年に出版したものです。この本はキロマンシー(cheiromancy)所謂西洋手相術、と言うと分かりやすいと思うんですが、一般的な手相鑑定の本ではない、何とか線だけで読むものではなく、手のひらや指にはその人の様々な情報が「印刷」されている、これを読む、ハンドリーディングする技術がキロマンシーであると書かれており、このキロマンシーについての紹介と詳細な解説が、この本のテーマとなっています。
で、CAとこのキロマンシー本に何の関係があるのかと申しますと、実はですねえ、
1. 序文がオリビア・バークレー
このことは知らなくて、買って驚きました。CAを現代に蘇らせた古典占星術復興の立役者オリビア先生、この本の序文を書いています。先生は、占星術とキロマンシー、この二つはセットとして古代より多くの偉人、知識人によって研究されてきた事、16世紀の占星手相見ヨハン・ロスマン(Johann Rothmann)の技法がこの本で紹介されている等、記しています。
ヨハン・ロスマンを皆さんご存じでしたでしょうか。私はもちろん知りませんでした。でもウィリアム・リリーは知っていたようです。ロスマンの名前と著書名はCAの参考図書がずらずらと記載されている目録「A catalogue of astrological authors」のRの項に、Johannes Rotmannus「Meteorologie synapsis」Frankford 1619とJohannes Rothmannus「Concordantia Genethliaca cum chyromatia」Erphordix 1595の2冊が載っています。
2. 最終章にCAのリリーの自画像版画考察
油絵の方ではありません、ウィリアム・マーシャルという版画家が手掛けた、リリーがいてテーブルの上にチャート図と本とペン立てがあって、窓の外は牧歌的な風景と天上にこれまた不可思議な円形チャート図が描かれているものです。太玄社の田中要一郎・紀久子両先生による日本語版をお持ちの方は、第3書でしたらP488に、第1書&2書でしたらP6にあります。絵の下に「GULIELMUS LILLIUS Astrologus」の文字が入っている方です。ちなみにこの文字はラテン語で「ウィリアム・リリー 占星術師」という意味だそうです。余談です。
私はある先生のブログを偶然目にし、あの奇妙なリリー版画で、なぜ彼が3室を指さしているのか、その事について「Hand reveals」という本に詳しく書かれています、とあり、即購入させていただきました。ある先生、ご教授感謝です。
著者のディラン先生が仰るには、この版画は非常に象徴的であり、暗喩的である、そうです。そしてCAがそもそもヘルメス主義的性質(Hermetic nature)のものであること。そしてそのような観点から研究されるべきであると述べられています。よって版画もそのような知識を持っている人にのみ伝わるように描かれている、そうです。
で、具体的に版画に描かれている何が何を意味しているかにつきましては、詳しくこの「The Hand reveals」に書かれていますので、ご興味のある方は是非買って、読んでいただきたいです。お求めやすい価格で内容も濃いです。熱烈お勧め致します。
そして、ディラン先生は
「ヘルメス主義者(Hermeticists)たちは、自分たちの知識が真のキリスト教の教えと一致し、さらにはそれを満たしていると考えてきました。リリーのクリスチャン・アストロロジーはその一例で、特にキリスト教のある種の形而上学的な側面を明確にするために、象徴的な知識がどのように用いられてきたかを示しています。」
とまとめています。
さあヘルメス主義者リリーはディラン先生が推測するように、CAの中に真のキリスト教の教えが、あると、一致していると、伝えたくてこのタイトルにしたのか。
私には実の所、さっぱりわかりません。
全然分かりません。どれくらい分からないかって、ヘルメス主義って何?ってところからわかりません(笑)
でもちょっと勉強したい気持ちは出てきました。CAの中に加え、ヘルメス主義の基本的な部分も、おずおずと学んでいけたらと、思っています。
前回その16ではCA P304 30行目からの、リリーが記している結婚成就5項目の内4項目までご紹介しました。今回は5項目目からです。
第5に、象徴星同士が何らかのトランスレーションにより繋がっている。あるいは象徴星間にリセプションがある。より動きの遅い惑星によるコレクションがある、象徴星間にディグニティ交換がある、7室にある月がアセンダントのロードもしくは7室のロードに力を与えている。
これらのどれかがあれば、そうなります。
トランスレーション(もしくはトランスファー)・オブ・ライトにつきましてはその13でお話をさせていただきました。リンク先の下の方に記してありますので、こちらの説明をご覧ください。
それでですね。
近年、 マ・シャア・ラー(Mā Shā’ Allāh ibn Athari 740-815)、アブ・マシャー(Abu ma’shar ラテン語ではAlbumazarもしくはAlbumasar。こちらの名前でCAの図書目録に3冊の書名があります:787-886)、アル・ビールーニー(al-Bīrūnī:973- 1048)、グイド・ボナッティ(生没年ともはっきりせず。13世紀イタリアで80歳くらいまで生きた人らしい)ら古代の有名占星術師達の研究が、英語で翻訳されるようになり、トランスレーション・オブ・ライトの技法についても、リリーが紹介した形式以外にいくつかのバリエーションがある事が知られるようになってきました。日本を代表する古典占星術の研究家であり占星術師、Kuni. Kawachi=河内邦利先生も著書「西洋占星術 星の階梯I」および「西洋占星術 星の階梯Ⅱ」でこのトランスレーション(Kuni先生はトランスファーと記しています)について非常に詳しく説明しています。これは他の、日本語で書かれた西洋占星術の文献ではとても求められない、質量ともに高度で充実した内容となっており、3星のコンビネーションを古代の術師達はどう観たかを知りたい方は勿論、古典占星術においてパーフェクション、つまり「質問者の望みは叶うか、成就するか」をホラリーチャートから正確に読み取る技術を学びたい皆さんに是非お勧めしたい二冊です。
リリー先生は、少なくとも上記占星術師達の内、CA図書目録に載っているアブ・マシャーとグイド・ボナッティの著書を読んでいると思われ、これらの技法が実際に使えるかどうか、試したと思うんです。多分。が、彼がCA111ページで、これぞトランスレーション・オブ・ライト・アンド・ネイチャー(Translation of light and nature)であると、紹介したのは、主たる象徴2星の間に「仲人さん的な」中継星が挟まり、中継星が分離接近することにより象徴2星を結びつけるという1パターンのみ、でした。
これは先生が実践し、効果を確認したと思われる結婚ホラリーのチャートが、CA389ページに収録されていますので、 トランスレーションのこの形には自信があったのでしょう。ご興味のある方は、私めがその9で紹介・解説しておりますので、ご覧いただければ幸いです。
結婚、裁判、その他一般的な諸問題にかなり効くよこれ、とリリー先生トランスレーションにかなり重きを置いている節が、111ページの記述からも伺えます。
よって先生が、CA P304の34行目「第5に、象徴星間に何らかの光のトランスレーションがある」と記したトランスレーションは、象徴星間に第3の惑星が挟まって、分離惑星の光を接近惑星に取り次ぐ役を果たす、系のものを主に考えているのでしょう。
続きまして「あるいは象徴星間にリセプションがある」についてなのですが、これも書き始めるとまたまた長くなりそうなので、日本占星術界におけるミューチュアル・リセプションの呪い(笑)も含めて、次回お送りさせていただきたいと思います。
今回はこの辺で。ありがとうございました。
アルカス